人間の60%は水でできているといわれ、わたしたちは当たり前のように毎日水を飲んでいます。
毎日飲む水なので、どうせ飲むならおいしい水を飲みたいですよね。
こうした考えから、近年は飲み水にこだわる方が増えています。
そういった水にこだわる方のなかで、最近注目されているのが「湧き水」です。
山や川を流れる湧き水をくんで飲んでいる人もいますが、そもそも湧き水がどういうものなのかをちゃんとわかっていなかったり、安全性が気になったりする方もいるのではないでしょうか。
そこで今回は、下記のような質問にわかりやすく答えていきます。
- 湧き水って何?他の水とどう違うの?
- 湧き水って飲めるの?気を付けることはある?
- 危険な湧き水はどう見極める?
- 安全に湧き水を飲む方法は?
この記事を読めば、どうすれば安全でおいしい湧き水を飲めるか丸わかりですよ!
もくじ
湧き水とは?
最初に湧き水の定義をご紹介しましょう。
2010年3月に「環境省の水・大気環境局にある土壌環境課『地下水・地盤環境室』」が定めた「湧水保全・復活ガイドライン」では、次のように定められています。
湧水を「地下水が自然状態で地表に流出したもの、もしくは地表水に流入するもの」と定義する。
他にも、古いですが1990年3月に制定・1995年2月に改正された農林水産省食品流通局長通達「ミネラルウォーター類(容器入り飲用水)の品質表示ガイドライン」でも、湧き水の定義が掲載されています。
主な原水の種類
(略)
3 湧水:不圧(自由面)地下水、被圧地下水の区分によることなく、自噴している地下水(引用元:https://minekyo.net/files/libs/344/201809201037324902.pdf)
農林水産省のガイドラインに「自噴」とあるように、一言で表現すれば、湧き水は「地下から出てきた水」ということになります。
川のような地上を流れる水でなければ、温泉水のように地下から掘り起こされた水でもありません。
湧き水の形態は地域ごとにさまざまで、厳密な定義を制定するのは困難です。
そのため、湧き水は広義に定義されています。
水質には特別な規定がなく、
動力でポンプアップした地下水や温泉水は湧き水に該当しませんが、人工的に採掘されたものであっても、自噴または採掘面から自然に湧き出たものは湧き水です。
上記のとおり、湧き水の形態は地域で異なるので全国統一基準を設けるのが難しく、公的な集計結果であっても詳細な基準は地域によって差が生じうるものとします。
湧き水の仕組み
続いて、湧き水の仕組みをご紹介しましょう。
ちなみに、湧き水ができるまでには約100年かかると言われています。
まず雨などの水が地面に染み込み、いくつもの地層で「ろ過」。
水を通しやすい層の上を通ると水は、どんどん下の層に入っていきますが、水を通しにくい層の上を流れる水は地下水として地下を流れていきます。
その地下水が地形などの影響を受けて、人工的な力なしで地表に湧き出たものこそ、湧き水なのです。
つまり、湧き水と地下水は元をたどれば同じで、地表に出ているかどうかの違いしかありません。
湧き水と天然水、ミネラルウォーターは同じ?
「湧き水と地下水は元をたどれば同じ」と上記で書きました。
それでは、市販の水でよく見かけるける天然水やミネラルウォーターも、湧き水と同じものなのでしょうか?
湧き水と天然水の違い
まず、湧き水と天然水の違いをご紹介しましょう。
元をたどれば湧き水と天然水は同じですが、天然水の水源は地下水です。
そして、天然水と呼ばれる水は「沈殿」「ろ過」「加熱殺菌」以外の化学的・物理的な処理を行いません。
つまり、湧き水と天然水との違いは、この処理を行っているのかどうかとなります。
ちなみに沈殿処理とは、源水中の微細粒子を取り除く方法のことをいいます。
採水した水に凝集剤などを加えて、微細粒子などを凝集させ、水と分けることで水をキレイにします。
沈殿で取り除く微細粒子は、ろ過では濾せないほどの小さいものだと考えてください。
湧き水とミネラルウォーターの違い
続いて、湧き水とミネラルウォーターの違いをご紹介しましょう。
ミネラルウォーターも天然水同様、地下水を水源としています。
ミネラルウォーターと湧き水の違いについても、「湧き水と天然水の違い」と同様で、安全性を確保するための処理を行っているのかどうかとなります。
そうなると、
という点で、疑問が浮かぶでしょう。
ミネラルウォーターと天然水の違いは、ミネラルの含有量ではありません。
ミネラルウォーターと天然水の違い
ミネラルウォーターは地下水を原水とし、品質の安定などのためにミネラルの調整や曝気(ばっき:水に空気を供給すること)をし、複数の水源から採水したナチュラルミネラルウォーターの混合などが行われているものです。
つまり、地下水を原水とした水に人工的な方法でミネラルの調整などを施されたものがミネラルウォーター、そういった調整を施されていないものが天然水ということになります。
また、安全処理についても「沈殿」「ろ過」「加熱殺菌」以外の化学的・物理的な処理が施されたものは、すべてミネラルウォーターと呼ばれます。
「湧き水」「天然水」「ミネラルウォーター」のそれぞれの違い一覧表
上記の結果から、湧き水と天然水、ミネラルウォーターの違いをまとめた表が次のものです。
湧き水 | 天然水 | ミネラルウォーター | |
源水 | 湧き水 | 地下水 | 地下水 |
ミネラル調整 | ー | なし | あり |
処理 | ー | 沈殿、ろ過、加熱殺菌 | 沈殿、ろ過、加熱殺菌以外も |
ずばり、湧き水は条件付きで飲めます!
湧き水がどんなものかご理解いただけたところで、今回の記事の本題に入りましょう。
湧き水は、「飲めるのか?それとも飲めないのか?」についてです。
結論からいえば、次にご紹介する2つの条件をクリアすれば飲めます。
条件1:湧き水を飲むときは自己責任
ひとつ目の条件は、湧き水を飲むときは自己責任ということ。
その大きな理由としてあげられるのは、湧き水は水質検査の対象外となっているためです。
わたしたちが日常的に使用する水道水は、水道法第20条によって厚生労働省が検査が定められており、「定期」および「臨時」の水質検査が義務づけられています。
しかし、湧き水は上下水道のように整備されているものではないため水道水に該当せず、水質検査の対象にはなりません。
そのため、どんなに澄んだ透明な水でも安全は担保されていないんです。
つまり湧き水の水質における安全性は、誰も保証してくれていないのです。
市町村で水質検査をしている場合もあるが、基本は自己責任
ただし、市町村が独自に水質検査を行っている場合があります。
水質検査の方法や検査の頻度などは自治体によるので、水道法の規定と異なる水質検査を実施している可能性も否めません。
また、市町村が実施する水質検査の多くは、ある程度知られた湧き水が対象です。
たとえば、環境庁(現:環境省)が1985年3月に設定した「日本の名水100選」などが、それにあたります。
日本の名水100選に選ばれていても安心はできない
環境省の公式ホームページにも記載されている通り、「日本の名水100選に選ばれていること」と「その水が飲めること」は、同義ではありません。
しかし、日本の名水100選に選ばれている湧き水は知名度があり、それ目当てに訪れる観光客も多いため、トラブルを防ぐためにも自治体が水質検査をしていることがあります。
しかし日本の名水100選に入らない湧き水や、知る人ぞ知る奥秘境の湧き水が、水質検査の対象になることはほぼありません。
日本の名水100選のような著名な湧き水を飲みつくした方のなかには、こうした水質検査の対象外の湧き水を飲みに行かれる方も少なくないでしょう。
その場合は都道府県や市区町村などの自治体のホームページも必ずチェックしたうえで、自己責任で湧き水をお楽しみください。
自己責任とはいえ、飲料不可の水は飲まないこと
とはいえ、すべての湧き水が必ずしも飲めるわけではありません。
その理由は先述のとおり、湧き水の形態は地域ごとに様々であるためです。
湧き水と一言でいっても、含まれる成分は異なるため、採水場所によっては飲み水にふさわしくない水質であることも珍しくありません。
湧き水は、先述のとおり自噴していればすべて湧き水なので、飲み水だろうと雑菌が入って到底飲めないような水だろうと、同じ「湧き水」です。
自己責任で湧き水を飲むとしても、必ず飲料水としてふさわしい水かどうかの確認はしましょう。
条件2:汲んだそのままの状態で飲まない
ふたつ目の条件は、汲んだそのままの状態で飲まないことです。
この点について、湧き水について少しでも知見のある方にとっては、当たり前のことかもしれません。
しかし、初めて湧き水を飲みに行く方や、ハイキングなどの途中にたまたま湧き水を発見した方にとっては初耳の可能性もあります。
湧き水は地下水が地表に出たものなので、トンネルや洞窟の中を流れる湧き水でない限り、屋根などの仕切りがない環境で雨ざらしになっているのが一般的です。
そのため、どんなに見た目が澄んだ透明色でも、雑菌はもちろんホコリやチリで汚れている可能性は高くなっています。
そのため、汲んできた湧き水を、そのままの状態で飲むのは絶対にやめましょう。
あなたの体調を守るのは、あなた自身しかいません。できる対策はしっかりと行い、過信しないようにしましょう。
汲んではいけない!危険な湧き水の見極め方
湧き水の水質は、周囲の環境によって大きく左右されるものです。
どんなに過去にキレイな水として評価されていたとしても、環境悪化すればダイレクトに水質に関わってくるでしょう。
ここでは、安全に湧き水を汲むために、最低限チェックしてほしい内容について4つほど紹介しておきます。
この4つは、ぜひ覚えておくようにしてください。では早速、紹介していきます。
上流地点に産業廃棄物がある場合は汲まない
水は当然のことながら上から下に流れていくものです。
そのため、湧き水となる水源の上流付近の環境によっては、目にはわからなくとも下流にある湧き水に、有害物質が含まれていることもあるのです。
その中の原因のひとつに、産業廃棄物の不法投棄があります。廃棄物の中身は安全とも言えませんし、染み出していないとも言い切れません。
そのため、湧き水が出ている近くにそういった形跡があった場合は、汲むのを避け別の水源を探すようにしましょう。
上流地点に農地や家畜飼育施設がある場合は汲まない
これも、先ほど紹介した産業廃棄物の不法投棄のケースと同様で、上流が汚れていては下流の水にも影響が出ます。
それが農地の場合では、農薬や化学肥料の成分が溶け出している可能性もありますし、家畜飼育施設の場合では飼育をする上で汚水が出ることもあるでしょう。
その汚水の中には、家畜の糞により、大腸菌が多くいる可能性があります。
これら懸念があるため、農地や家畜飼育施設が近くにある場合も、その湧き水を汲むことは避けた方がいいのです。
温泉が近くにある場合は汲まない
これは意外に思う方もいるかもしれませんが、温泉が近くにある湧き水も、実は危険が潜んでいます。
というのも、温泉が湧き出る場所が近くにある場合、その付近の水には「ヒ素」「フッ素」が多く含まれていることがあるのです。
「ヒ素」とは、自然界に普通に存在するものですが、大量に摂取してしまうことで、体に害を及ぼすことがわかっています。
この点については、農林水産省の公式HPで以下のように記載してありました。
(3)一方、無機ヒ素が一度に、または短い期間に大量に体の中に入った場合は、発熱、下痢、嘔吐、興奮、脱毛などの症状があらわれると報告されています。また、無機ヒ素が長期間にわたって、継続的かつ大量に体の中に入った場合には、皮膚組織の変化やがんの発生などの悪影響があると報告されています。
※引用元:農林水産省(食品中のヒ素に関するQ&A)
このように、一部有害物質の濃度が濃くなっている可能性があるため、温泉が近くにある場合の湧き水についても、汲むのは避けるようにしてください。
鉱山が近くにある場合は汲まない
鉱山が近くにある場合で最も不安なのが、重金属が湧き水に含まれてしまう可能性があることです。
たとえば、以下の金属類が水源に含まれてしまう可能性があります。
- 鉛
- 亜鉛
- マンガン
この中で「鉛」を例に挙げると、鉛は神経や造血機能、腎臓などに悪影響を与えることがわかっています。
また脳にも悪影響を与え、知能指数の低下や行動に障害をきたすこともあるのです。
この点については、厚生労働省の「鉛の健康影響について」の資料に詳しく記載がありますので、気になる方は目を通してみても良いかもしれません。
安全に湧き水を飲む方法
ここからは、安全に湧き水を飲む方法を4つご紹介しましょう。
1: 煮沸してから飲む
基本中の基本といえる一つ目の方法は、煮沸してから飲むこと。
菌は熱に弱いので、沸騰すればたいていの菌は生きてはいけません。
ポイントは、ヤカンや鍋に入れた湧き水がボコボコ音を立て始めて5分から15分は煮沸し続けること。
しばらく煮沸させることで、熱に弱い菌をひとつも残すことなく死滅させられます。
ただし、熱に強い菌が入っている可能性もあるので、煮沸すれば100%すべての菌を取り除けるわけではありません。
その点だけ注意してください。
2:ろ過装置を使う
二つ目は、ろ過装置を使うこと。
湧き水のなかには菌以外にも、目視できない微粒子レベルの汚れや、上流から流れてきた汚れなどが含まれていることがあります。
そういうものを体内に入れないためにも、ろ過装置で「ろ過する」というひと手間を加えましょう。
水筒サイズの携帯ろ過装置であれば、数千円で購入できます。
煮沸させたものをろ過しても、ろ過したものを煮沸しても、順序はどちらでも構いません。
3:苔が生えているところから湧き水を汲む
安全に湧き水を飲む方法のひとつに、「キレイな湧き水を汲む」という方法があります。
それを実践するコツのひとつが、三つ目の「苔が生えているところから湧き水を汲む」です。
苔が生えていると、一見不衛生な水に見えますが、湧き水に塩素が含まれていない証拠になります。
水道水のカルキと異なり、自然の水に含まれる塩素は人間によってコントロールされていないので、逆に危険です。
おいしい湧き水の判断方法として、苔が生えているかどうかを調べることは、実は非常に大切なことなのです。
4:市販の湧き水を飲む
最後にご紹介する方法は、市販の湧き水を飲むこと。
と思ってこの記事を読んだ方のなかには、煮沸しても「ろ過」しても確実に安全とはいえない事実にガッカリしている方もいるでしょう。
安全性にどうしても妥協できないのなら、市販の湧き水を飲むのが最も安全といえます。
ペットボトルなどでも購入できますが、ウォーターサーバーで湧き水を導入するのもおすすめです。
というのも、配達される水は衛生面に配慮された工場内で処理やパッキングをしており、厳しい検査をクリアした水のみが自宅に届けられるためです。
また提供される水の採水地も、さまざまで好みに合わせて飲み比べができるウォーターサーバーもあります。
冷水でも温水でも好きな飲み方でおいしい湧き水を飲めるので、安全な湧き水を飲みたい方はもちろん、お湯を沸かす時間も惜しい多忙な方にもおすすめです。
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今回は湧き水の仕組みや安全に飲む方法についてご紹介しました。
今回ご紹介した4つの方法なら安心して湧き水を飲めますが、湧き水を目視で確認することも大切です。
たとえ自治体のホームページで水質検査もしていて飲めると書いてあっても、自然環境は常に変化を続けています。
水質検査をしたときは検査水準に引っかからなくても、そのあと何かしらの原因で検査水準から外れてしまうこともあるのです。
と考える人もいますが、ちょっとした油断が病気などの原因になります。
一度湧き水が原因で健康トラブルが発生すれば、たとえ飲料水として問題がなくても、利用すること自体が禁止になる可能性すらあるのです。
湧き水は自然のものなのに、一人のわがままによるトラブルが原因で二度と楽しめなくなるのはもったいありません。
自治体の規定や水源近くの看板の指示に従い、安全に湧き水は楽しみましょう。